ソーシャルビジネスケース集

再犯を起こさせない社会づくり・人づくり

株式会社ヒューマンハーバー

図1 日本財団職親プロジェクトの修了式の様子

基本的な社会常識を身に付けてもらい、本当にしたい仕事に就いてもらう。それが見つかるまで働ける場所になるように「人間の港、ヒューマンハーバー」と名付けました。

株式会社ヒューマンハーバー1(以降、ヒューマンハーバーと記載)は、「再犯を起こさせない社会づくり」を理念に掲げ、刑務所出所者および少年院出院者(以降、出所者・出院者と記載)に対して、更生保護を目的に「就労・教育・宿泊」という三位一体の支援を提供している。資源リサイクル業などを通して事業収益を上げることで、継続的支援を実現する同社の事業は、株式会社として更生保護を支える仕組みを提供する、日本初の事例である。
2012年に創業し、日本で第一号のユヌス・ソーシャル・ビジネス・カンパニー2として認定された同社は、利益の最大化を追求する以上に、社会課題の解決を第一の目的としたビジネスモデルを構築している。
ヒューマンハーバーの事業は、3つの部門で構成される。まず、就労支援部門「ある蔵」では、製鋼原料や非鉄金属の買取り・販売等の資源リサイクル業、そして、産業廃棄物の中間処理事業を行っている。次に、宿泊施設運営・宿泊支援部門「てんしん館」は、出所・出院した人が、自立のために生活する場を提供する部門である。最後に、出所者・出院者支援を行う教育支援部門「そんとく塾」では、自立更生に向けた教育プログラムを実施している。後述する「心のスポンジプログラム®」という独自の教育技術を用いて、再犯を起こさせない社会づくり・人づくりを目指している。
「心のスポンジプログラム®」は、同社の「そんとく塾」内で実施するだけでなく、出所者・出院者の再チャレンジを支援する「日本財団職親プロジェクト3」の中でも採用されている。同プロジェクトでは、企業が出所者・出院者を雇い入れ、更生を支える仕組みを提供しているが、これらの企業に雇用された出所者・出院者も、「心のスポンジプログラム®」を受講することができる。2022年12月現在、同プロジェクトに協力する企業からも、23名の修了生を輩出している。


図2 ヒューマンハーバーが目指す「再犯を起こさせない社会づくり」
(出典:ヒューマンハーバーウェブサイト「事業モデル」をもとに筆者作成
http://www.humanharbor.net/moderu/)2023年1月24日参照

1 代表者:副島勲、本社:福岡県福岡市中央区
2 ムハマド・ユヌス博士が提唱するソーシャル・ビジネスの「7つの原則」を遵守し、社会課題解決を目的として事業を行っている企業。出典:九州大学ユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センターウェブサイト(https://sbrc.kyushu-u.ac.jp/130979.html)2023年1月10日参照
3 日本財団職親プロジェクトは、参加企業、法務省、矯正施設、専門家など様々なメンバーで、刑務所出所者や少年院出院者が再チャレンジできる社会、犯罪被害に悲しまない社会を目指すプロジェクト。2013年に発足。出典:日本財団職親プロジェクトウェブサイト( https://shoku-shin.jp/)2023年1月19日参照

このケースは、株式会社ケース・ラーニングが、九州地域ソーシャルビジネス・コンソーシアムの監修のもと作成した。ケースの記述は、経営管理上の問題点を例示するものではない。本ケースの作成にあたっては、株式会社ヒューマンハーバーの副島勲社長はじめ、社内外の方々にご協力いただいたことに感謝したい。