孤独のない社会をつくる

有限会社トラスト/株式会社マイソル

図1 コミュニティ型共同住宅「POSTO & Co.」のイメージ図

九州コ・ワーケーション推進コンソーシアムは、有限会社トラスト1と株式会社マイソル2の2社が共同で設立した組織である。

同コンソーシアムは、コミュニティ型共同住宅事業や起業家コミュニティの運営を通して、孤独の解決と社会課題に取り組む起業家の創出を目指すコ・ワーケーション事業を推進している。

コ・ワーケーション事業とは、地域の課題解決を目的にした「起業」と暮らし方の「シェアリングモデル」を掛け合わせることにより、人口減少や生活スタイルの変化が生み出す孤独・孤立や貧困、空き家といった社会課題を同時に解決することを目指す九州発のソーシャルビジネスモデルである。

本事業は、複数の世帯がプライバシーを守りながら共同で生活する、北欧発祥のコレクティブハウスをモデルに構想したものである。一般的なマンションのように、各部屋に専用のキッチン・トイレがある一方で、建物内に入居者らが利用できるコミュニティスペースが設けられており、食事やミーティングなどの時間を共有できる点を特徴としている。生活の一部を共にすることで、ゆるやかなコミュニティを作りながら暮らすことができるため、単独世帯3が増加する日本においても、近年注目されている。

同コンソーシアムは、コ・ワーケーション事業の最初の取り組みとして、2023年12月にコ・ワーキングスペースと住居が一体になったコミュニティ型共同住宅を福岡県北九州市の門司港地区に開設する4。現在、3階建ての空きビルを改修し、単身起業家、単身女性、ひとり親、単身高齢者などの入居者同士が協力しながら暮らせる場所の整備を進めている。

このコミュニティ型共同住宅の特徴は、希望する入居者に対して、起業支援や雇用支援を行う点である。世代や社会的背景を超えた助け合いの循環を生み出しながら、社会課題を解決する起業家の育成や、起業をベースとした社会的自立を支援することを目指している。

同コンソーシアムが開設するコミュニティ型共同住宅では、1階フロアにコミュニティスペースを設置し、ここをイベントやコ・ワーキングスペース、地域住民との交流の場などとして活用する計画である。入居者に限定せず、地域に開かれた複合的な共生空間を実現することで、空き家を活用しながら地域活性化にもつなげていく。

同コンソーシアムは、2020年度休眠預金活用事業の資金分配団体である九州地域ソーシャルビジネス・コンソーシアム(公益財団法人九州経済調査協会/一般社団法人ユヌス・ジャパン)が実施する「ソーシャルビジネス循環モデル地域形成事業5」の実行団体6に採択されている。コ・ワーケーション事業のビジネスモデルを九州から発信し、日本全国に広げていくことを目指している。

1 代表者:小野祐紀香、本社:東京都中央区
2 代表者:福澤久、本社:福岡県福岡市博多区
3 世帯人数が一人の世帯を指す。
4 2023年11月現在の情報。12月から2階部分の入居が可能な状態となる。
5 九州地域(九州・沖縄・山口)を対象とした、休眠預金等活用制度に基づく助成事業。指定活用団体である一般財団法人日本民間公益活動連携機構より、公益財団法人九州経済調査協会と一般社団法人ユヌス・ジャパンが資金分配団体に採択され、実施している。助成事業を通して、ソーシャルビジネス先進地域の創出とネットワーク化を目指している。出典:公益財団法人九州経済調査協会ウェブサイト「休眠預金等活用制度に基づく助成事業」(https://www.kerc.or.jp/ksbc/) 2023年11月1日参照
6 資金配分団体から採択を受けて、活動を実施する法人や民間団体等を指す。

このケースは、株式会社ケース・ラーニングが、九州地域ソーシャルビジネス・コンソーシアムの監修のもと作成した。ケースの記述は、経営管理上の問題点を例示するものではない。本ケースの作成にあたっては、有限会社トラストの小野祐紀香代表取締役と株式会社マイソルの福澤久代表取締役をはじめ、社内外の方々にご協力いただいたことに感謝したい。